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あな特インサイド

インタビュー

「19歳の女性の苦悩に伴走(前編)」黒田記者に聞く。

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記者だから、人に寄り添う、並走する

 記者は、取材対象者にどこまで関わるべきかー。メールやSNSで読者・情報提供者とつながることが多い「あな特」は、通常の取材活動より一人一人の人間と、記者との距離が近い。「あな特」がきっかけで、一人の若い女性の苦悩に向き合い、連載「19歳の地図」を書いた黒田加那記者(28歳)は、その女性の人生観を変えるほど深く関わることになった。もちろん、記者がすべての取材対象者に寄り添うことは不可能だ、個人的な思い入れが強くなりすぎると冷静な報道ができなくなる恐れもある。しかし、19歳の女性の心の叫びは、黒田記者を突き動かした。「あな特」だから書けたともいえる連載「19歳の地図」の背景、そして葛藤しながら、取材対象者との寄り添い方を見つけた黒田記者の思いを追った。

 黒田記者が新聞記者を志したのは大学時代のこと。うつ病を患う知人が、1本の記事で気持ちが前向きになったこと、「記事の力」に衝撃を受けたことが記者を目指したきっかけだという。「家族や友人が薦めても病院に行こうとしなかったのに新聞記事を読んで受診するようになったんです」。100行程度の記事が人を助ける力になる、自分もそんな記事を書く新聞記者になりたい、と思ったという。一本の記事にじっくり取り組める「あな特」のスタイルは学生時代にやりたい、と思った新聞報道のあり方に近いと感じている。

  19歳の女性ヒカル(仮名 敬称略)から「あなたの特命取材班」に「どうして19歳だけ国や市が動く対象ではないのか知りたい」と書かれたLINEメッセージが届いたのは2019年9月のこと。「あな特」に寄せられるメールやSNSは、取材・調査依頼の内容が、細かく書かれていることが多く、この投稿はあまりないケースだった。通常だと「定型文」で投稿へのお礼を返信するだけで、取材対象になることはまずないだろう。だが、黒田記者の心に何かが引っかかった。「なんとなく言葉をかけてあげたかった」。返信してみると、長い文面が帰ってきた。やりとりする中で、ヒカルが幼いころから母親から精神的暴力を受けていること、一刻も早く今の状況から逃げ出し、新生活を始めたい、でもさまざまな「壁」が行く手を遮っていることなどが見えてきた。

 ヒカルは発達障害と精神障害の診断を受けていた。注意欠陥多動性障害(ADHD)と双極性障害(そううつ病)。母親には日常的に暴言を吐かれ、「そのたびに気持ちがビリビリに破かれる毎日」。家を出ることを強く願っていたが資金がない。母は1人暮らしに反対。父は音信不通。親しい付き合いのある親戚もいない。児童相談所での一時保護について地元の市役所に相談してみたが「児童相談所で保護できるのは18歳未満まで」。地元の社会福祉協議会や市役所の複数の課を回ったがどこも解決策は示してくれなかったという。

 「福岡在住。親から逃げたい。誰か泊めてください。」なかば自暴自棄になりインターネット上の家出をした女性に泊まる場所や食事を提供する「神待ち掲示板」にそう書き込んだこともある。「もし出会った人に殺されてしまっても、今の生活を続けるよりはまし」と思ったという

 将来の一人暮らしに向けて不動産店に行ってもみた。でもここでも19歳の壁が立ちはだかる。結婚していない未成年は、物件の契約に親の同意が必要だった。親には頼めない。保証人代行会社の利用も考えたが未成年では利用できないケースが多い。ヒカルはどこにも行けず立ちすくんでいた。

 「あな特」に送ったLINEメッセージをヒカルは「ダメ元で吐いた弱音というか愚痴」という。「とにかく家を出る手段を探していたけど、どこも19歳は受け付けてくれなくて、腹立たしい気持ちと、悲しい気持ちで、あまり大きな期待もなく送ってみました」。ヒカルは西日本新聞の読者ではなく「あな特」はCMを見て知っていた程度。しかし「大きな期待もなく」という言葉とは裏腹に「あな特」へのLINEメッセージは、誰でもいいから助けてほしいというギリギリまで追い詰められたSOSだったのだ。

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連載「19歳の地図」を書いた 黒田 加那(くろだ かな)

2015年入社。東京都出身。佐賀総局を経て、2019年からクロスメディア報道部。 「共生社会」をテーマに、あなたの特命取材班に届く多くの人の困り事に向き合い、取材している。